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人事評価制度設計の留意点

2013年5月29日
 

週末に小学校の運動会に行ってきました。気持ちの良い天気で和やかな雰囲気の中、プログラムが進んでいきましたが、点数化される競技になると雰囲気がかなり変わります。勝った、負けたの世界になるわけで、校舎に掲げられた紅組、白組の点数表示が更新される度に、一喜一憂する子供たちと父兄の姿がとても印象的でした。ビジネスの世界では、人事評価というシステムの中で、勝つことに対してどの程度、チーム・個人が貢献したかを会社の物差しで測るわけですが、その評価結果が、お金(昇給や賞与)や社内での地位(昇進・昇格)にかかわってくるので、運動会の点数と違って、「爽やかさ」を感じることは殆んどないのではないかと思います。


点数化できるものは、まだましで、点数化しにくいものになると、人事評価に対する社員の満足度は、さらに下がります。同じ業績を上げている営業マンが、全く同じ人事評価でも不満はでますし、営業プロセスの巧拙や獲得した契約が会社に与える価値に配慮して評価に格差をつけても、やはりどちらかの営業マンに釈然としない感情が残る可能性があります。人それぞれに自分自身の評価基準があり、「あの人があれだけもらっていて、わたしがこれだけなのはおかしい。」という感情が生じるからです。この感情が組織内に蔓延すると、円滑な協力関係を維持することが、次第に難しくなっていきます。

 
多くの会社で意識調査を実施した経験からすると、人事評価に満足している社員の割合が50%を超えるケースは、かなり少ないと言えます。本来の人事評価の役割は、経営陣から期待されている働きをして、実際に成果を上げている人に適切に報いると同時に、そのような人たちに報いることを示すことで、その他の社員をも勇気づけることです。言い換えれば、「私も、ああなりたいので頑張ろう!」という動機づけと育成のためのツールでもあるべきものです。

 
特に中小企業のように社員の顔と名前が一致するレベルの組織サイズでの人事評価は、金銭処遇がらみの否定的な感情が生じやすいので、技術的な評価制度の設計と同時に、「この仕組みを入れた場合、社員の健全な協働関係に支障は生じないか?」ということを常に検証することが大事ですね。また、「頑張った人に報いたい」という要請を受けて人事制度を設計するお手伝いをすることが少なくないですが、社員からすると、「私は頑張っていない」と思って働いている人は、多くはないので、人事評価の尺度、基準の明確化も、とても大事です。


一人ひとり、自分なりの尺度で頑張っているわけですので、会社の期待する業績の水準や行動プロセスのあり方、協働のあり方などを示すことで、そのギャップを埋めていく必要があります。これは、評価制度を設計して導入して終わりという性質のものではなく、事業の継続的な運営の中で、日々ブラッシュアップをはかり、評価する側もされる側も、納得のいく内容に進化させていくべきものなので、制度の導入はスタートラインに立つことという認識を持って、頑張ってほしいです!


ちなみに運動会では、点数をつけない学年別の「団体演技」がありますよね。子供たちが一致団結して、一生懸命演技している姿は、かわいらしく、とても爽やかな余韻を残してくれました。長い不況の中で結果を求められてきた会社員は、いつしか戦場で戦う戦士のような存在になってきましたが、点数を気にせず、縁あって同じ職場で働いている仲間と一致団結する機会を意図的に設計することも、組織の活性化の面から大事だと思います。金銭的報酬と非金銭的報酬の双方が大事ですという話をよくしますが、職場で働く仲間同士が、お互いの良い面をみて尊重し合う文化が根付いていないと、砂上の楼閣になりかねません。非協力、もっと悪くすれば、足の引っ張り合いのような企業文化に陥らないよう、日々留意しながら経営したいものです。人事評価制度の導入が、意に反して、そのようなネガティブな状況を生み出す引き金にならないよう配慮しながら、これからも支援を続けていきたいと思います。
  
  
  
  
    
    
 
 



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