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本物のコンピテンシーモデル

2013.8.4

 

お盆休みまであと一週間ですね。さて、今日は、コンピテンシーモデルの話です。コンピテンシーモデルは、高い業績を上げている社員の行動特性を観察して、そのエッセンスを抽出し、他の社員がまねできるようにモデル化したもので、人事評価の中の行動評価の項目として活用されていることが多いと思います。


成績の良い人の真似をすれば、同じように良い成績を上げられるだろうという考え方が基本になっており、優秀であると会社が認める社員に対してインタビューを行うことによって、どのような場面で、どう考えて、どのように行動したか、ということを過去の事実ベースの話を元に紐解いていき、最終的にそれらをモデル化してモデル社員の行動評価指標とします。


このやり方は、それなりに理にかなっているように見えるので、結構世の中に普及しているのだと思いますが、どんな方法論にも注意しないといけない点はあります。コンピテンシーモデルについて言えば、作成されたモデルはあくまでも過去の成功体験に基づいて作成されたもので、将来に渡って最善の行動モデルであるという保証は、どこにもないということです。


しっかりメンテナンスできる組織体制がある会社は、常にモデルの見直しと改善ができるので大丈夫とは思いますが、そうではない組織では、注意が必要です。特に中小企業では、成熟した大企業と比較して、ちょっとした経営環境の変化で、あっという間に過去の成功体験は通じなくなってしまいます。大企業でもそうですが、中小企業は、その度合いがより大きいと思います。


独立して中小企業のクライアントを支援するようになって感じるのは、上記のような状況であるにもかかわらず、プロダクトとして定型化したコンピテンシーモデルを「販売」している業者が結構少なくなさそうだ、ということです。コンピテンシーモデルをパッケージ化した商品として売っているので、恐らく報酬(というより商品の価格)は、コンサルティングベースで行うよりもずっと安いのだと思います。


しかし、商品としてのコンピテンシーモデルを購入して、人事評価の指標にしたとして、どんな効果があるのだろう?というのが率直な感想です。もしかしたら、新入社員向けに、「報告・連絡・相談をきちんとしている」という程度のものであれば、パッケージ化した商品でも良いのかもしれません。でも、それぐらいだったら、自分で作るという人も少なくないような気がします。


コンピテンシーモデルは、本来、「会社の経営戦略を実現するために社員が実践するべき行動を規定するべきもの」であるはずですので、会社独自の経営戦略と期待している人材像に沿ったものである必要があります。かつ、過去の成功体験から抽出できるものだけでなく、一歩先の事業環境を見据えた上での「今後、社員が取るべき行動」を先取りしてモデルに反映させることも求められます。さらに、対象者は、新入社員や事務職の人はもちろんのこと、会社の中核を担う全ての人材を含みます。


ですので、まずは自社の経営ビジョンと戦略、自社の社会的使命や理想としている人材像などを、改めて可視化できるレベルまで練り上げることが、とても重要になってきます。これらは、全てコンピテンシーモデルを策定するうえでの重要な前提条件となります。


市販のコンピテンシーモデルを購入された方には、改めて自社の環境に合わせてカスタマイズすることをお薦めします。



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