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非正規社員の戦力化

2013.10.15
 

以前勤めていた事業会社(上場小売業)では、社員のPA化ということがスローガンとして掲げられていました。PA化、つまり、正社員をパートとアルバイトに置き換えることを促進する活動です。
 
小売業の中で、GMSと言われる業態(イオンや7&iなど)では、業界平均で多分80%ぐらいは非正規社員が占めているのではないかと思います。店舗だけに限ってみれば、店長とフロア責任者以外は、全部契約社員という会社もあります。絶対的な人数を絞り込んでいることもあり、売り場で何か聞きたいときに誰もいない、という状況を経験したことがある方も少なくないのではないでしょうか?
 
基本的に社員をコストとして捉える企業は、非正社員比率を上げる方向に経営の舵を切る傾向が出てきます。労働政策研究・研修機構が2012年に実施した調査によると、非正規社員を活用して役立っている点のベスト2は、「景気変動による雇用調整が容易」、「賃金の抑制効果」ということです。
 
一方、回答企業の7割近くが、非正規社員を活用する上で何らかの問題を抱えているという結果も出ています。最も多い問題は、「責任を求められない」、その次が「職域・職務が限定されている」、「モチベーション・向上意欲が高くない」というものです。
 
雇う側としては、非正社員を「コスト」としてみている傾向が強いので、安いコストで雇った以上、当然、責任や職務の範囲は小さくなりますし、人材の育成を含めて面倒なことにはリソースを投入しないため、本人たちにしてみれば、「私達は、コストだ。」という認識になりがちで、必然的にモチベーションが上がる環境設定ではなくなるということになってしまいます。
 
一方、非正社員の中に、とても優秀な方がいることも事実です。人事コンサルティング会社時代にご縁のあったクライアント企業も含めて必ず、給料が圧倒的に低いパートさんが、若手の正社員を教育しているという状況がありました。小売りの店舗でも工場の生産現場でもしかりです。
 
こういう優秀なパートさん、契約社員を責任ある役職に登用する制度を設けて、実際にフル活用している企業も中にはあります。流通小売業で長年増収増益を続けてきたシマムラなどが代表格ですが、その他にも色々あると思います。
 
これらの企業では、非正社員の登用の仕組みを作るだけではなく、運用を徹底しているのが特徴です。実際、契約社員の店長が複数いたり、各売り場の責任者も非正社員のみというところも少なくありません。雇用形態に関わらず、優秀者をどんどん抜擢していける会社が伸びるのは自然ですね。特に非正規社員の登用の場合は、正社員の登用と比較したコスト抑制とモチベーション向上のダブルの効果が期待できるので、挑戦してみる価値がある課題ではないかと思います。
 
現実には、色々と経営上の制約があって、そこまでは踏み込めないという会社も少なくないとは思いますが、まずは、非正規社員の方に対して、みなさんは大切な人材ですというメッセージの浸透から始められてはいかがでしょうか?それほどコストを掛けなくても、簡単な食事会を設ける程度でも、士気に与える効果は小さくないのでは?


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