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非正規社員比率増加の意味

2013.10.21
 

総務省統計局が発表した平成24年就業構造基本調査によると、雇用者(役員を除く)に占める非正規社員の割合が38.2%となり、過去最高を更新しました。
 
この割合の上昇は今後も続くものと思われます。最近の円安局面で大手製造業も一息ついている感じがしますが、ホンダや日産自動車がSUVの海外現地生産の強化を決めたように、アジアを中心とした低い人件費構造の国・地域への生産の移管は今後も続けざるを得ないと思いますので、国内製造業の空洞化懸念が叫ばれて久しいですが、私達一般庶民の目に見える形で現実のものとなってきている感じがします。
 
時系列で数字をみると、平成4年は21.4%だった非正規社員の割合が、20年間で16.8%も増加しており、特に女性就業者に関しては、57.5%が非正規社員という結果です。男性就業者に関しては、22.1%と女性よりも低くなっていますが、もはや無視できる水準でないことは明らかです。
 
政府は、助成金を活用して医療・福祉分野への人材移動を進める意向ですが、これらの業界では、非正規社員の採用ニーズが高いということもあり、さらに非正規社員の割合は増えそうです。
 
人を雇う企業側としては、これまで以上に、どの雇用タイプの就業者(正社員、契約社員、パート、派遣社員、外注など)をどのような局面で雇用するかという「雇用戦略の構築」が重要になってくるのと同時に、非正規社員の消費者としての観点を活用した、マーケティング&セールスの仕組みの再検討も必要かと思います。
 
自社で非正規社員を多く採用している業種では、新商品・サービスの事前モニターを社内の非正規社員に対して行うこともありますね。外部のマーケティングサービスを活用するよりも、安上がりで、かつ、非正規社員の人たちのモチベーション向上にもつながり一石二鳥です。私が直接知っている会社では、新商品のヒット率もまずまずのようですので、一度検討されてみてはいかがでしょうか?
 
若年層の初職(最初に就いた仕事)の39.8%が非正規社員
 
また、平成19年10月~平成24年9月の5年間において、学校卒業後に最初についた仕事の雇用形態をみると、非正規社員として採用された人が、全体の39.8%(男性29.1%、女性49.3%)で、こちらも過去最高を更新中です。(20年前の5年間は、全体が13.4%。男性8.0%、女性18.8%)
 
日本企業の雇用慣行と言えば、かつては、春の新卒大量一括採用、終身雇用、年功序列、企業内労働組合でした。これら日本的経営の殆どすべてが、多くの大企業で機能不全をきたして久しいですが、統計数値で見せられると、改めて隔世の感がします。
 
一方、中堅・中小企業にとっては、有能な人材を採用できるチャンスが到来しているともいえます。
新卒者の大企業志向は、今後も高い水準で推移するかと思われますが、すでに若年層(15~34歳)の約4割が、初めて就職する時の雇用形態は非正規社員であるという現実もあり、採用マーケットへのアプローチの工夫次第で、中堅・中小企業の採用力の格差が開きやすい時代が到来したといえます。
 
入社する会社を選ぶ基準としては、当然金銭的な処遇水準がありますが、お金以外のものも重視する傾向が出てきているように思います。こちらは統計数値はありませんが、お金以外の代表例として、会社のビジョン、社会的使命を経営陣が自分自身の言葉で、熱意を持って伝え続けているか、ということが一つの基準としてあります。
 
ビジョン・ミッションが、組織体としての行動規範に反映されており、幹部層、中間管理職まで含めて、納得して実践されている状態にまで高められていれば、それを見た学生たちにとって、この会社で働きたいという気持ちを駆り立てる大きな要因となるかと思います。
 
かつて、大手会社の経営ビジョン、社会的使命を可視化するプロセスを通じて組織を活性化する取り組みを支援したことがありますが、うまくやれば、セッションを通じて共有される会社の使命に社員が共感し、やる気が俄然、高まるという効果があります。
 
そういう社員の集団が働く組織は、就職活動をしている人たちにとっても、魅力的な職場に見えるに違いないと思います。採用力を高めるために、まずは社内の社員が、今の仕事に充実感を感じているか点検してみてはいかがでしょうか?彼らが、会社のブランドとして採用力を高める鍵であると思います。


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