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時間外労働単価の計算方法

2013.11.28

 

様々な業種・規模の会社の就業規則・給与規程を拝見する機会がありますが、今日はその中で良く不備が目につく、時間外労働手当(残業代)の単価計算について触れたいと思います。会社の給与規程には、必ず時間外労働手当の計算方法を定めなければなりませんが、基本的な計算式は、以下の通りです。
 
一時間当たりの労働に対する単価 X 各月の時間外労働の時間数 X 割増率 = 時間外労働手当の額
 
今回は、この計算式の各項目のうち、「一時間当たりの労働に対する単価」について詳細の内容を確認してみましょう。
 

一時間当たりの労働に対する単価
 
これは、毎月決まって支給される固定的賃金(諸手当を含む)の総額を平均月間所定労働時間で除した額と、法令上、明確に定められています。固定的賃金とは、基本給や役職手当など、毎月決まって支給される賃金の全てを指しますが、一部除外されているものがあります。
 
家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われる賃金、一か月を超える期間ごとに支払われる賃金が、いわゆる残業代の時間当たり単価を計算する計算式に含めなくても良いことになっています。もちろん、これらを単価に含めても、労働者の利益になることなので、当然お咎めはありません。「あ、じゃあこれからは家族手当を残業代の計算基礎から外そう!」という発想は、労働条件の不利益変更の問題があるので、直ちにそのような措置を取ることは極めて困難です。不利益変更に伴う諸課題は、またいづれ書きます。
 
話を戻します。ここで気を付けないといけないのは、上に挙げた家族手当や住宅手当などの名称で支給している賃金でも、実際の家族の人数構成や、個々人が負担している住宅の家賃に関係なく、一律に定額で支給されるタイプの手当は、残業代の単価に含めないと法令違反になるということです。通勤手当でも全員一律〇万円という支払い方であれば、同様に残業代の単価計算に反映させる必要があります。つまり、手当の名称如何にかかわらず、個人ごとの状況に応じて支給されているものでない限り、残業代の計算基礎になるということです。ちなみに社会保険では、通勤手当も標準報酬月額の算定基礎に入りますね。
 
この通達が出たのは、12,3年前ぐらいですが、大手企業でも意外に未対応の会社が少なくないようです。たとえば、社宅で家賃負担軽減の便益を享受している社員とその他の社員の公平性の観点から、その他の社員に住宅手当を一律〇万円支給するという類の措置をとるケースが実際にあります。このケースでは、その他の社員に支給される住宅手当は、残業代計算の基礎単価に含まれることになります。残業代の基礎賃金となることを認識してきちんと対処していれば良いですが、知らずにいるケースもあるようです。

残業代の基礎にしないようにするためには、面倒ですが、一人一人の住宅ローンの支払額の〇%とするとか、個人契約の借家の家賃の〇%とするなどの対応が必要ですね。では持家でローンもない人はどうするのか?という質問が来そうですが、そのような恵まれた境遇の方に会社が住宅手当を支給する必要性があるのかという観点からも検討する必要があると思います。時間があれば、ちょっと考えてみようかとも思いますが、今回は先に進みます。
 
 
もう一つの因数である「平均月間所定労働時間」の算出方法も見てみましょう。これは、次の算式で計算します。
 
(365-年間所定休日数)÷12 X 一日の所定労働時間
 

年間所定休日数が125日で、一日の所定労働時間が8時間の場合、この式の答えは、160時間になります。給与規程に、「時間外労働単価を計算する際に用いる月間所定労働時間は160時間とする」というような規定をよく見かけますが、このような会社は、年間の所定休日数が125日より多い場合は、法令違反となります。土日と年末年始休暇を含めると大体年間123日前後になりますので、このほかに所定の夏休みや会社の創立記念日、メーデーなどを所定休日としている会社は自社の計算単価が法令基準を下回っていないか、念のために確認されることをお薦めします。
 
その他、実際の時間外労働時間数のカウントの実態についても、タイムカード上の記録とパソコンの電源オンオフの時間のギャップなどを労働基準監督官はしっかり確認していきますが、これはまた別の機会に。ダンダリン労働基準監督官(水曜夜10:00)でも取り上げるかもしれませんね。


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