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定額残業代に対する逆風

2013.12.5


今日は、神奈川県社労士会の研修で、労働法に強い弁護士先生の講演を聞いてきました。講演のタイトルは、「定額残業代に対する逆風とその運用」でした。このブログでも何度か残業代のテーマを取り上げてきましたが、専門書にも今後も書かれないであろう生の情報に触れることができ、貴重な機会となりました。


詳しくは、顧問企業向けのニュースレターで触れたいと思いますが、講演内容の骨子は以下の通りです。

● 定額残業代制度は、第二期に突入した。
● 第一期における裁判例は、就業規則や契約書に定額残業代の定めがない事例であった。
● 現在は、就業規則や契約書に定めがある事例が争われているが、去年、潮目が変わった。
● 書面で規定されていても、運用がおかしければ否認される時代になった。
● 基本給などに定額残業代を組み込む方式は、かなりの確率で否認される。
● 給与明細書が重要。就業規則に定額残業代を明記しても、給与明細を変更しないと否認される可能性が増している。
● 就業規則に明記していても、社内で周知していなければだめ。原告が周知されていないと言えば、証明は困難。
● 固定残業代への切り替え時には、個別同意書もしくは契約書をとらないとリスクが極めて高い
● 毎月労働時間をカウントしていて、固定残業代を超過した場合に支給できる実態がないとアウト

大体このような骨子でしたが、様々な小話も飛び出し、楽しく(?)拝聴しました。

上記にある潮目が変わった判決というのは、顧問先向けのニュースレターには以前書きましたが、昨年、最高裁判決に付された意見書で、元労働省出身の裁判官の方が、定額残業代を実施している場合に必要な要件として、以下の3点を示したものです。

(1) 雇用契約書に明確に示していること
(2) 支給時に、支給対象の時間外労働の時間数と残業手当の額を明示すること
(3) 固定残業代を超えて残業した部分が、その支給日に上乗せして支払われることを明らかにしていること

とても厳しい内容で実務的な対応の観点からすると、多くの会社にとっては、とても難度が高いと思われます。あくまで補足意見なので拘束力はなく、先例としての価値はないということですが、去年あたりから、確かに企業にとってとても厳しい判決が相次いでいるようです。

取り敢えずの対応策として、現在、基本給や基本年俸に固定残業代を組み込んでいる会社では、切り離した上で、明確に固定残業手当ということが分かる名称で支給されることが無難だろうと思います。もちろん、何時間分の残業代かということは明記した上での話です。



 



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