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外国人社員の労働・社保適用

2013.12.17


外資系企業では、日本法人に勤務する外国人社員の社会保障制度への加入について迷われることも少なくないかと思います。国籍別でみると、最も多いのは、多分、米国系の企業ではないかと思いますが、日本国内の外資系法人で働く外国人社員は、大きく分けて、(1) 日本法人に直接雇用されている社員、もしくは、(2) 海外本社からの派遣社員(出向者)のいずれかになります。(1)の外国人社員は、基本的に、全ての労働保険、社会保険の適用がありますので、ここでは(2)の外国人社員に対して、労働保険・社会保険の適用がどのようになるのか、簡単に記載します。

外国人社員から、「本国の社会保障制度に加入しているので、日本の社会保障には加入しなくてよいはずだ。」とか、「日本の社会保障には加入したくない。」と言われて対応に困るケースもあると思いますので、参考にして頂ければと思います。

海外本社からの派遣社員(出向社員)への社会保障の適用

労災保険
:海外本社等からの出向社員(外国人)が、日本の事業との関係で指揮命令を受けていれば労災保険の適用を受けます。日本法人が給与を支払っていない場合でも、海外本社等から支払われている給与を元にして労災保険料を計算します。

雇用保険
:雇用保険の適用事業に雇用される限り、海外からの出向者であっても雇用保険の被保険者になります。雇用保険に関しては、外国人社員の雇用に関する届け出制度がありますので、こちらも忘れずに報告する必要があります。また、労災保険と同様、日本法人から支払われる給与等がない場合も、一定の方法で保険料を算出することが求められており、やはり被保険者となり、保険料の徴収義務が生じます。

健康保険:健康保険法上の適用事業所に該当する限り、外国法人からの出向者であっても、日本の健康保険の被保険者となります。但し、社会保障協定が出向元の国と日本の間で結ばれている場合は、本国で同様の社会保障に加入している適用証明書を提出することで、日本の健康保険への加入はしなくて良いことになっています。

現在、国家間の社会保障協定は、2012年8月時点で14か国(日本年金機構ホームページによる)という状況です。例えば、アメリカ人の出向者の場合、日本への出向期間が5年以内、かつ、本国アメリカにおいて、本人だけでなく、日本に同伴する被扶養者全員が、日本で療養を受けるために適切な保険契約を締結つしていることが求められます。

厚生年金
:健康保険と同様、厚生年金保険法上の適用事業所に該当する限り、外国法人からの出向者であっても、70歳未満であれば日本の厚生年金の被保険者となります。但し、社会保障協定が出向元の国と日本の間で結ばれている場合は、本国で同様の社会保障に加入している適用証明書を提出することで、日本の厚生年金への加入はしなくて良いことになっています。派遣期間が5年以内という要件は、健康保険の場合と同じです。

健康保険・厚生年金の標準報酬月額算定届に記載する外国人社員の標準報酬については、仮に日本法人からの給与の支払いがなくても、直近3か月間の海外本社等からの給与の支払い記録を確認することで、保険者算定により決定することになります。

こうしてみてくると、「外国人だから社会保障に加入しなくてよい」とか、「日本法人から給与の支払いがないから加入しない」というような理由は、通らないケースが結構あるということが分かります。

外国人社員の主張を鵜呑みにして保険料の徴収をしないでそのままにしておいた場合、社会保険の未加入として会社の責任となってしまうので、しっかり対応することが必要です。特に、コンプライアンスを含めて、高いレベルの内部統制が求められる上場企業などは、外資系企業を買収する場合、日本法人の社会保険の適用、特に、外国人への適用も確認をしたほうがよいかと思います。

 



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