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ブラック企業の調査結果

2013.12.19
 

厚生労働省が9月に実施したブラック企業の疑いのある会社への立ち入り調査結果が、新聞紙上等で公表されました。一昨日の日経新聞の夕刊一面にも掲載されたので記事を読んだ人も多いと思います。昨今、すっかり市民権を得て、言葉として定着した感じのある「ブラック企業」ですが、特に若い世代に対して、しわ寄せがいっている感じを強く受けます。

何を持ってブラック企業と称するのか曖昧な部分はありますが、長時間労働、残業代不払い、パワハラなどが、こういった企業に共通するキーワードのようです。今回の厚労省の調査によると、残業代の不払いだけではなく、10か月以上も通常の賃金が不払いになっている事例もあったということですから、普通の状態でないことは明らかです。

様々な調査結果によると、学校を卒業しても4割近くが、いわゆる正社員として就職できず、非正規社員となっている実態が把握できますが、6割強の正社員になった人も、3年以内に3割以上が退職するという統計が出ています。つまり、学校を卒業して、最初に正社員として就職した会社で、3年以上勤める人の割合は、4割ちょっとということです。日本的経営の特徴の一つであった終身雇用は、今の20代の人たちにとっては、完全に崩壊している状況といえそうです。

若い世代の失業率がとても高くなっている欧州をはじめとした諸外国では、若者のデモが頻繁に起きていますが、日本でも同じような状況に向かって突き進んでいるような気がしてなりません。企業にとって労働法を遵守していくことは当然の義務です。それができない企業は、市場から退場するべし、というのが正論と思います。

しかし一方で、勤めている会社がブラック企業であったとしても、会社がなくなってしまったら困るのも社員です。簡単に再就職できるような環境でないことは、先の統計情報からも明らかです。特に、中小企業がこういった状況にあると思います。とても難しい状況です。政府が旗を振って、構造不況業種から、今後の成長が見込まれる業種への若者移動を支援していますが、この動きをどう加速できるか、です。

ところで、同じ中小企業でも、外資系企業の日本法人は、少し事情が異なります。日本法人は小規模の会社でも、グローバルでは多国籍に展開する巨大企業ということも少なくありません。外資系企業というと、残業代を払わないというイメージがあるかもしれませんが、直接関与してきた外資系企業(200~300社くらい)の状況を踏まえると、殆どの場合、しっかりと残業代を計算して支払っています。ただ、固定残業代をあらかじめ払っていて、それを超えた部分だけ残業代を払うという会社が、外資では少なくないと思います。


ところが、「うちの会社は残業代は払わない」と真顔でいう社長に、何度か出会ったことがあります。コンサルティング会社の社員だった頃の話ですが、海外の本社から数年間の期限付きで派遣されてきている外国人社長たちです。

殆どの外国人社長たちは、しっかりと日本の労働法を踏まえた適切な対応をすることを心掛けていますが、時々、自分の本国の労働法を前提に全てを発想する社長がいて、「ホワイトカラーには残業代は払わない」とか、「営業社員にも残業代は不要」といったことを問答無用で押し通していたりします。

相手は英語で、しかもそもそものレベルの日本の労働慣行や法律を知らないだけでなく、日本と異なる本国の法律を持ち出してくるので、ちょっと話したぐらいで理解してもらうことは、至難の業です。しかも、こういうタイプの人は、本社への業績報告でしっかり利益を上げることが自分自身のキャリア形成にも繋がっていくので、固定費の多くの部分を占める人件費には、とても神経を尖らせています。

こういうタイプの人たちとは、長期戦を覚悟でしっかり腰を据えて話し合っていくことが必要ですが、コンサルティング会社勤めの時は、効率を求められますので、中々一つの問題クライアントに時間を投入することがしずらいというジレンマもありました。

今は独立してやっているので、こういう会社にもしっかり時間を使って対応していきたいと思います。外資系企業の話を書きましたが、日本の中小企業のクライアントも増えてきたので、いずれ問題会社に出会う時が来ると思います。その時に備えて怯まないように、日々鍛錬を重ねておかなくてはと、今回の厚労省の調査結果をみて感じた次第です。




 



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