2013年12月13日
2013.12.13
企業は、労働基準法上、勤続年数に応じて年次有給休暇(有休)を付与することが義務付けられています。入社時から勤続0.5年時点で10日、勤続6.5年経過時点で20日の付与が必要になります。正社員と比較して所定労働時間や就業日数がすくない契約社員等は、勤務実態に応じて、付与日数は調整されます。
有休は、法令に定められた労働者の権利ですが、様々な調査結果をみると、有休の取得率は50%未満に留まっている状況です。一方、海外においては、有休は使い切るものということが、半ば常識となっている国もあるようです。コンサルティング会社に勤務していた当時に担当した案件を思い出すと、法令で定められた有休を100%消化することはもちろんのこと、会社が定める所定の休暇についても、100%消化するのが普通という国を少なからず目にしました。
たとえば、病気やけがなどの場合に取得できるSick Leave(傷病休暇)を有給で取得できる制度をもつ外資系企業は少なくありませんが、傷病休暇も100%消化することが普通というアジアの国もありました。日本の常識では、ちょっと考えられない状況ですね。
たとえば、病気やけがなどの場合に取得できるSick Leave(傷病休暇)を有給で取得できる制度をもつ外資系企業は少なくありませんが、傷病休暇も100%消化することが普通というアジアの国もありました。日本の常識では、ちょっと考えられない状況ですね。
さて、日本の有休消化率に話を戻します。平均値として、付与された有休の半分弱しか実際には消化されない有休ですが、当年度中に取得できなかった分は、翌年度末まで持ち越せますが、それ以降は失効してしまいます。つまり、労働者としては、給与をもらいながら休める権利を半分は放棄している状態にあるということです。
社員としては、もったいない状況ともいえますが、実際は自分が有休を取得することで、上司、先輩、同僚、部下に業務のしわ寄せがいくことを気にして、中々休むことができないのが多くの企業の実情だろうと思います。
あるいは、有休を取得するどころか、毎週の休みも取れずに、振替休日がどんどん溜まっていくという人も、少なくないのではないでしょうか?こうなってくると、実態として4週4休の法定要件を満たしていない会社もあるでしょう。いわゆるブラック企業かもしれません。
ところで、米国などでは、有休残日数を引当金として計上する必要があります。負債としてバランスシート上、認識するということです。一方、日本の会計基準では、いまのところ、引当金を計上する必要はありません。この会計基準の違いも、有休の取得率に間接的に影響を与えているかもしれません。
こういった彼我の違いもあるためか、外国では、法定の有休休暇を買い上げることが認められている国もありますが、日本では、法定の有休休暇を買い上げることは、退職時等の特別な状況にある場合を除き認められていません。買い上げを認めると、労働者が適切な休暇を取得する権利をカネで買い上げることに繋がり、「健全な心身の状態で労務を提供する」ことが困難になりかねないという懸念が背景にあるからです。つまり、労働者を保護する観点に立った発想ですね。
実際に働いている人の感覚としては、どうせ休めないのならせめてお金で清算してくれたほうがマシ、という気持ちもあると思います。しかし、立法の趣旨を踏まえると、今後も有休買い上げが解禁されることはなさそうです。経営の観点からみても、買い上げで現金が流出することになれば、実質的な賃上げと同じですので、相当な抵抗を示すことは想像に難くありません。
そうすると、実際に取得できない有休に意味があるのかという疑問も湧いてきます。一つの対応としては、大企業でみられる失効年次有給休暇の積立制度があります。時効で失効した有休を一定の限度日数まで積み立て、傷病などの場合に取得できる制度です。こういった制度があれば、上限日数はありますが、一定の有効性はあるのではないかと思います。
あるいは、現在、退職の場合に限り買い上げることが非合法とされていない部分を積極的に展開し、退職時の有休買い上げを強制する方向に持っていくことも考えられます。社員はいつ退職するか分かりませんから、こういう強制措置が施行されれば、会社としては有休取得の促進策を考えざるを得なくなるでしょうね。このトピックは、またちゃんと考えてみたいと思います。