過労死と時間外労働の関係

2013年12月24日

2013.12.24
 

クリスマスイブの今夜は家族や仲間と楽しく過ごす人がいる一方、深夜まで仕事をする人もいると思います。こういったイベントの時ぐらいは、社会全体で夕方6時以降は、就業を禁止するなどの措置が取れないものかと思います。

ドイツなどでは、日曜日の小売業の営業などが法律で禁止されていますが、やろうと思えばできるということの証左です。元旦は、ほとんどの会社が休むように、集合的な合意形成をして、皆で一斉に同じ行動をとれば、大きな問題は起きないのではないでしょうか?

経済学で「経路依存性」という概念があるそうです。一旦方向性の決まった集団行動は、結果の良し悪しに関係なく、固定化・習慣化していく傾向を持つということです。残業をするということが当たり前の組織風土が一旦出来上がると、それが固定化・習慣化され、その良し悪しに関係なく、その状況を変えるためには、とても大きな力が必要になります。

長時間労働が美徳という日本の会社は少なくないと思いますが、会社の施設で、スーツにネクタイ姿で長時間働くというのは、少なくとも健康上は、肉体的にも精神的にも、最良の働き方ではないでしょう。

同じ働くにしても、一旦自宅へ帰宅し、家族と食事をしてシャワーを浴びてから改めて仕事を継続するとか、全員で会議をする必要がない時は、社外勤務を認めるなど、柔軟な働き方を実現することで、労働の生産性が改善し、会社も社員ももっと幸せに近づけるような気がします。

長時間労働が行き過ぎると、精神的な疾患や過労死の原因にもなり得ます。最近、長時間労働を強いる企業に若者が使いつぶされる例が増えているようです。こうなってくると、長時間労働は美徳という方程式は成り立たないどころか、社会悪という意識を持って対処策を考えることが必要になってきている面があります。以下に、過労死防止へ向けた取り組みについて、弁護士ドットコムの記事(2013年10月12日付け)を引用します。
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(引用開始)

死ぬまで働かされる——。近年、長時間労働を強いる企業に若者が使いつぶされ、心身の健康を害したり、自殺に追い込まれる事例が報告されるなど、「働きすぎによる死」が相次いでいる。

そんな中、国に対し、総合的な対策を求める動きがある。「過労死防止基本法」の制定に向けた取り組みだ。過労死遺族や弁護士らでつくる「過労死防止基本法制定実行委員会」によると、2010年秋から始まった法案制定を求める署名活動には、今年9月11日時点で46万人を超える賛同が集まっている。

「働きすぎ」を防ぐためには、労働基準法をはじめ、労働組合法や労働契約法など、すでにいくつもの法律がある。今回の「過労死防止基本法」は、すでにある法律と何が異なるのだろうか。制定されることで「過労死防止」への取り組みはどう変わるのか。過労死防止基本法制定実行委員会の事務局長をつとめる岩城穣弁護士に聞いた。

●「過労死防止」の基本理念を明確にする法律
そもそも「過労死防止基本法」とは、どんな法律なのだろうか。
「過労死防止基本法の主なポイントは、次のような内容になるべきだと考えています。

(1)労働者全体、さらには勤労市民全体の過労死を防止するという基本理念を掲げること
(2)国と自治体、使用者(雇用する側)の責務を明確にすること
(3)過労死・過労自殺についての調査・研究と、それに基づく総合対策を国などが行うこと」

この「基本法」は労働基準法などと何が違うのだろうか?
 
「基本法とは、最高法規である憲法と個別の法律の間にあって、国政にとって重要な問題について、基本的な制度・政策・対策などについての理念や原則を明らかにする法律です。現在わが国には、約40の基本法があり、近年では自殺対策基本法や肝炎対策基本法などがあります。労働分野では労働基準法や労働組合法、労働契約法をはじめとする多くの法律がありますが、労働分野の基本法はまだありません」

●現在の法律は「過労死・過労自殺」の歯止めになっていない
いま、「基本法」が必要なワケは?
「残念ながら、労働基準法をはじめ、労働安全衛生法、労働組合法や労働契約法などは、過労死・過労自殺の有効な歯止めとはなっていません。その現状を変える必要があるのです」

現在のルールのどこが問題なのだろうか? ポイントを挙げてもらった。

「たとえば労働基準法は、労働時間の規制を中心に労働者の保護を図る法律です。ところが、労働時間の上限について規制はなく、使用者は、労働組合または労働者の代表と協定(36協定)を結べば、実質的にはいくらでも残業をさせることができてしまいます。

この点について、厚生労働省は、たとえば1週間の時間外労働の限度を15時間とするといった『時間外労働の限度に関する基準』を策定していますが、法的強制力はなく、これを超える36協定も、受理せざるを得ないのが現状です」
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(転載終了)

皆さんの会社の就業時間の実態は、いかがでしょうか? まさか自分の身の回りで過労死する社員が出るとは、普段あまり想像もしていないのではないかと思います。やや古い統計ですが、厚生労働省労働基準局が2011年に発表した資料によると、脳・心臓疾患による労災請求件数は898件で、そのうち死亡に関する請求は302件となっています。また精神障害による同年の労災請求件数は1272件で、そのうち自殺(未遂を含む)は、202件ということです。

この数字の背後にどれくらい潜在的な過労死事例があるのかについては、実態調査がないので分かりませんが、労災申請に至った件数より多いということは間違いないでしょう。仮に労災申請がされた件数だけをみても、ほぼ毎日誰かが過労死しているというのが、今の日本の実態ということになります。

先に掲載した弁護士ドットコムでは、転載しきれなかった部分になりますが、過労死の引き金は、長時間労働に加えて、パワハラなどの精神的に過重な負荷がかかることを挙げています。複数の要因が複合的に絡み合ってそのような状況に至るということです。

これは感覚的にも納得のいく分析ではないかと思います。長時間労働をしていても精神的に活き活きしている社員が多数を占めている会社もありますし、それほどの長時間労働ではなくても、疲弊感が蔓延している会社もあります。
 
こういったことを考えると、長時間労働が諸悪の根源ではなく、むしろその他の要因が大いに影響を与えているとみたほうが実態に近い可能性があります。いわゆる「やらされ感」を感じている時は、義務感から仕事をしている状態で、文字通り、生活費を稼ぐサラリーマンになりがちです。

逆に、仕事の社会的意義や、もっと具体的に「私の仕事(サービス)の提供を期待して待っている人がいる」ということが明確な場合は、その期待に応えようと質の高い仕事をするインセンティブが働きます。
 
過労死防止基本法を制定することで、長時間労働に歯止めをかける施策の実行を促すことと並行して、仕事の意味、働くことの意味を、特に若い人たちに対して、会社の幹部は、説明していく責任があるのだと思います。このテーマを書き始めると長くなりますので、参考図書としては、稲盛和夫さんの「生き方」を読まれることをお薦めします。