2013年12月28日
2013.12.28
今年(平成25年)の4月に改正高年齢者雇用安定法が施行されて約9か月が経ちました。老齢厚生年金の支給開始年齢の引き上げに伴い、会社を退職した後の年金の空白期間が生じないようにするという観点から、高齢社員の継続雇用に関する法的枠組みを整備したものです。
65歳未満の定年を定めている会社の場合、具体的には、以下のいずれかの措置を講ずることが求められています。
(1) 定年年齢を65歳以上に引き上げる
(2) 定年の定め自体を廃止する
(3) 65歳まで継続して雇用する制度を設ける
労務行政研究所が今年6月から7月にかけて実施した調査によると、93.5%の企業が(3)の65歳まで継続して雇用する制度のみを導入しており、その具体的な制度内容は、一旦定年年齢(60歳等)で雇用契約を終了し、新たに別の雇用契約を結びなおす(定年後の再雇用)という形態がほとんど全てということです。
この調査結果は、実務家としての実感値とも一致しています。野球の大リーグの契約を見ていても同じ傾向が見て取れるように、年齢が上がれば、心身の故障の可能性やモチベーション維持の難度が上がるなどの観点から、複数年契約は、雇う側にとっては小さくないリスクと言えます。
今年4月からは、経過措置はあるものの、希望者全員に対して65歳までの雇用の申し入れが義務化されました。定年の定め自体を廃止したり、定年年齢を引き上げるという企業は極めて少数派です。多くの会社が、1年単位の有期雇用契約を最大65歳まで繰り返し締結するという方法を選ぶのは、マネジメントとしては必然の流れだと思います。
ところで、同じ平成25年4月1日に施行された改正労働契約法(第18条)では、有期雇用契約の社員が、5年を超えて継続して働いている場合、無期契約社員へ転換できる権利(無期契約転換権)を付与しました。
この定めは、特に定年退職後の再雇用である有期契約雇用者を除外していません。ということは、定年が60歳の会社で65歳まで1年契約を5回繰り返した時点で、会社としても65歳を超えて引き続きその人を雇用したい場合、無期契約への転換権を行使される可能性があります。
そうすると、定年後の再雇用のつもりで雇用していたものが、法の強制力で、無期契約に転換されることになります。体が著しく不自由になるなどして解雇事由に該当しない限り、退職しないでよい社員が発生する可能性があります。
この点は、労働契約法と高年齢者雇用安定法の改正施行前から話題になっていたので、ご存知の方にとっては、記憶に新しい所だと思います。
こういった状態になることは、明らかに合理的な話ではないので、「どうしたらいいのでしょうか?」ということになりますが、法的な手当は今のところありません。会社としては、65歳以降のある年齢を第2の定年として就業規則に定めて、終身雇用社員が発生しないように自己防衛をする必要があります。
法改正から9か月経った今、再一度この話題を取り上げた背景は、ご縁のあった会社の就業規則を見ていても、この点への対応をしていないケースがほとんどであると言ってよい状況であるのと、もう一つの理由は、当時まだこのブログが立ち上がっていなかったので、取り上げることができなかった、、、ということもあります。
特に、社員規模が数百人以上の企業は、定年で退職する社員が一定数存在することが多いと思われるため、記憶が新しい今のうちに、適切な対応をされておくほうが無難だと思います。個人的には、性善説を支持していますが、会社のリスクマネジメントとしては、やはり必要でしょう。