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定年廃止で生涯現役社会

2014.1.3
 

新年あけましておめでとうございます。年末年始は、曜日の並びで大型連休となりましたので、ゆっくりと休暇を取られた方も多いと思います。このブログも5日ぶりの更新になります。2014年も、組織・人事、M&A人事、人事労務関連のトピックについて、日々の仕事の中での気づきを紹介していきたいと思います。

今日の日経新聞に、「定年制がなくなった」という想定で、近未来の会社の仕事風景が紹介されていました。記事を読まれた方も多いと思います。厚生労働省による調査「高年齢者の雇用状況2013年」(対象約14万社)によると、81.2%が60歳以降の継続雇用制度を採用しており、定年の引き上げは16%、定年制の廃止は、2.8%に留まるということです。

以前このブログでも紹介した労務行政研究所の調査「大企業を中心、2013年実施」では、継続雇用制度が93.5%という結果でしたので、昨年4月の改正高年齢者雇用安定法の施行後も、大多数の会社は、依然として継続雇用制度を提供している実態が伺えます。

定年の廃止や引き上げをするほうが、社員のモチベーション維持の観点から好ましいことは論を待たないと思いますが、雇用の延長に伴う人件費の増加を考えると、一足飛びに定年延長や定年廃止に踏み切れるのは、ごく一部の企業に限られるのが現状だと思います。

まだしばらくの間は、継続雇用制度を適用する会社が多数派である状況が続きそうですが、人材マネジメントの仕組みとしては、あまり洗練された制度でないことも事実です。60歳の定年退職後、給与を定年前の40~60%程度に設定している会社が多く、また、賞与も支給しなかったり、あるいは、支給されても固定的な賞与で、評価や成果による増減がほとんどないということが多いようです。

このような状況でも、定年退職再雇用後の役割や仕事内容は、それまでとあまり変わらないような場合も少なくないため、本人たちにとってみれば、「同じ仕事なのに、給与が半分に減ってはやる気が出ない。」ということになりがちです。

一方、若い世代の社員の目線からは、「定年前の半分とはいえ、大した仕事もしていないのに、給与水準は高い。」と見えるかもしれません。こういった世代間による認識の格差が生じる背景には、かつて主流であった年功賃金のメリットを高年齢社員ほど多く享受してきたということがあると思います。

こういった過去の経緯を巻き戻して修正することはできませんが、今後手を打っていく方向性としては、やはり年功によらない賃金体系の構築ということになるでしょう。組織上の役割・責任に応じた資格・等級体系を整備し、相応の報酬水準を設定していくことが基本路線だと思います。

大企業を中心に、この動きはすでに始まっています。年齢によって賃金が上がる仕組みから、役割・責任や能力によって賃金が決まる仕組みへの変更です。若い人もシニア層の社員も、60歳超の社員も年齢に関係なく、実力次第で大きな役割を任せられ、それに給与も連動する仕組みです。逆に、実力がないと判断されれば、給与が下がることも今まで以上に厳格に実施される厳しい運用が求められることになるでしょう。

いわゆる米国型外資系企業の人材マネジメント手法に近づいていくのではないでしょうか?実際の運用面がどうなっていくかは今後の推移を見守る必要があります。定年廃止への助走段階となる定年の引き上げに動いた企業がどういった対応をしていくのか、継続的に見ていきたいと思います。

一方、定年制を一旦は廃止したものの、再度復活させた日本マクドナルドの事例もあります。当初、定年廃止で実力主義による人材登用を目指したものの、人材育成の仕組みがうまく定着せず、逆に社員の間で自らのポジションを守る姿勢が強まってしまった、というのが定年制復活の理由ということです。(2014年1月3日 日経新聞より)

会社の置かれた状況によって最善の処方箋は異なると思いますが、大きな流れとしては、定年廃止を通じて生涯現役社会に突入していくというのが、この先の日本の姿ではないかと思います。

老後の生活を支える厚生年金の支給開始年齢は、2025年度に65歳となることが決まっていますが、2026年以降も、当面、70歳まで段階的に支給開始年齢が繰り下がっていく可能性が濃厚だと思います。

さらにその先は、亡くなるまで年金が支給される終身年金ではなくなる可能性や、移行措置の困難さから議論が進んでいない確定拠出年金への移行も、ないとは言えません。厚生年金の財政が厳しくなれば、企業年金が辿っているのと同じ道を国の年金も辿るとみるのが自然です。

これからの厳しい時代を生き抜いていくためには、会社に就職するという「就社」意識から脱して、一生生き抜いていくためのスキルを身につけることが、今まで以上に重要になってくると思います。

新年早々、ちょっと重い話題になりましたが、これが日本社会の実態だと思うので、眼を背けずに、自分の立場からやれることをやっていきたいと思います。


 



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