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パート労働者の処遇改善

2014.1.5
 

短時間労働者(パート労働者)の処遇改善へ向けた法改正を進めるという厚労省の方針が発表されましたね。本日、日経新聞の一面にも記事が載りました。パート労働者の処遇改善については、以前から継続的に議論、および、法改正が重ねられてきましたが、さらに正社員との処遇格差をなくす方向に動いています。
 
現在のパートタイム労働法は、平成20年4月1日に施行されています。パートタイム労働法(「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」)の対象となる「短時間労働者(パート労働者)」とは、以下の通り、定義されています。
 
「短時間労働者(パート労働者)」=「一週間の所定労働時間が同一の事業所に雇用される通常の労働者(正社員)の一週間の所定労働時間に比べて短い労働者」
 
上記の条件にあてはまるパート労働者は、約1,200万人おり、約7割は女性労働者であると言われています。
 
このパート労働者のうち、次の3つの条件を満たす場合、賃金、教育訓練、福利厚生について、パート労働者であることを理由とした差別的な取り扱いが禁止されています。
 
(1) 職務の内容(業務の内容および責任)が正社員と同じである
(2) 人材活用の仕組み(人事異動の有無および範囲)が、全雇用期間を通じて同じである
(3) 契約期間は、無期、あるいは、反復更新により無期と同一である
 
今回発表された厚労省の方針では、(3)の要件を外すというものです。この改正が実施されれば、新たに10万人程度のパート労働者が、正社員と同じ処遇を享受できるようになるということです。
 
1,200万人のうちの10万人ということで、「うちの会社には関係ない」と思われる社長さんも少なくないかもしれません。しかし、この条件に当てはまらないパート労働者に対しても、パートタイム労働法は、賃金、教育訓練、福利厚生について、一定の義務を事業主に課しています。
 
この機会に改めて自社の状況を確認されてみることをお薦めします。パートタイム労働法では、パート労働者を4つのタイプに分類しており、それぞれのタイプについて、賃金、教育訓練、福利厚生の内容について、実施義務・配慮義務、あるいは、努力義務を課しています。
 
例えば、正社員と比較して、職務および人材活用の仕組みが同じパート労働者(仕事の内容および責任範囲が正社員と同じ、かつ、一定期間は人事異動の有無および範囲が正社員と同じ労働者)に対しては、以下の定めがあります。
 
■ 賃金(基本給、賞与、役付手当等)について、正社員と同一の方法で決定する努力義務
■ 職務遂行に必要な能力を付与するための教育訓練の実施義務
■上記以外の教育訓練実施の努力義務
■ 健康の保持又は業務の円滑な遂行に資する施設の利用(給食施設、休憩室、更衣室)に関する配慮義務
 
(詳細は、厚生労働省のホームページをご参照ください。)
 
日本も含めて世界的に、合理的でない処遇格差は解消するという大きな流れがありますので、今後もこういった法改正の動きは続くものと思います。
 
企業にとっては、人件費の増加に結びつく法改正ではありますが、正社員と全く同じ職務、人事異動の有無および範囲が適用されているにも関わらず、処遇格差を設けているのは、10万人という規模から考えても一部の企業に留まると思われるので、今回の厚労省の法改正方針は、一部の不適切な労働条件を提供している会社に対する是正措置として妥当な方向性だと思います。
 
今回の方針で、大きく影響を受けそうな会社は、この機会に自社の状況を見直し、適切な雇用管理と処遇を実現されることを願っています。


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