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就業規則の効力と落とし穴

2013.7.21


今日は朝食を済ませた後の涼しいうちに、参議院選挙の投票に行ってきました。選挙は、日本の舵取りに影響を与えられる数少ない機会なので、毎回欠かさず投票に行っています。老若男女を問わず、国政に関心を持つことが国政改革の第一歩になるので、投票率には毎回注目していますが、なかなか上がってこないですね。


さて今日の話題は、就業規則です。10人以上の労働者を雇用する事業主は、就業規則を定めて労働基準監督署に届け出る必要がありますが、経営者も社員も、普段はあまり意識していないという会社が少なくないのではないでしょうか?
 

投票所に向かいながら、現在の日本人の政治に対する関心の低さから、会社での就業規則に対する認識の低さを連想して、今日のブログのトピックとなったわけですが、似ているのは関心が低いことだけではなく、所属員に対する影響力やその効力が、必ずしも小さくないということもとても似ています。
 

就業規則に何が書いてあるか知らない社員も、当然就業規則の記載内容に束縛されますし、それに従わない場合は、状況によっては、懲戒処分の対象にもなりえます。経営者としても、就業規則に定めた範囲を逸脱して社員を働かせたすることは制約を受けますし、就業規則の定めが個人別の雇用契約書の内容を上回っていれば、就業規則の内容が適用されるため、思わぬ落とし穴にはまってしまうこともありえます。
      
通常、就業規則では、付属する諸規程も含めて、就業時間や時間外労働、給与の支払い方、年次有給休暇、福利厚生、退職金などの取り扱いを定めます。法令に準拠している限り、社員の合意を取り付けなくても、意見聴取をしたことを客観的に示すことができれば、その就業規則が労基署に届け出てあれば有効となります。


経営者側の認識不足として少なくないのが、契約社員やパート・アルバイトに対する就業規則の整備です。「うちは就業規則は定期的にメンテナンスしている。」とおっしゃる会社の就業規則を拝見すると、「この就業規則は、正社員に適用し、非正規社員には適用しない。」という趣旨が記載してあることが少なくないのですが、「非正規社員用の就業規則も拝見させていただけますか?」というと、

(社長)「それはありません。」
(当社)「じゃあ、契約社員の労働条件は、どうなってるんですか?」
(社長)「採用した時に渡した労働条件の通知書に書いてます。」


というパターンが多いです。


しかし、就業規則は、個別の雇用契約よりも法的な効力が強いことは、前段に記載のとおりです。するとこの場合どういうことになるかというと、非正規社員用の就業規則がない以上、「正社員の就業規則が非正規社員にも適用される。」ということが起こってしまいます。


もちろん、普段は表面化しないかもしれませんが、何かのきっかけで裁判沙汰になった時には、過去の判例に倣うと、正社員の就業規則が適用されることになってしまい、例えば、有給休暇の日数も正社員と一緒、退職金が支払われないはずの非正規社員にも退職金を支払う義務が生じるなど、理不尽な結果となってしまう潜在的なリスクを孕んだ状態であるということです。


また就業規則の中で、労使ともに関心の高いアイテムとして、時間外労働(残業)があります。時間外労働をする際の賃金の割増率や時間当たり賃金単価の計算式は、給与規程に記載されることが普通ですが、時間単価の計算方法が間違っており、法定最低基準に満たない場合も少なくないようです。割増率のほうは、それほどでもないですが、深夜残業を管理監督者に支払っていない会社は、恐らく結構あるのではないか、というのが実感値です。


残業に関する論点やエピソードはとても多いので、それはまた機会を改めて書きたいと思います。今日は長文になってしまうので、この辺にしておきます。しかし、健康管理の観点から、猛暑日の残業禁止令というのも、あっていいかもしれません。そこまでいかなくても、サマータイム制は、検討してほしいですね。





 
 
  
  
  
  
  
  
 

 



 



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