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賃金不払い残業実態と対策②

2013.11.17

 

前回の続き、時間外労働手当(残業代)について考えてみたいと思います。前回紹介した他にも、違法という認識がないまま運用している残業代の払い方をまとめてみます。貴社の実態を確認してみて、万一当てはまるようであれば、仕組みの変更を検討することをお薦めします。

 

1. 振替休日未消化型


業務繁忙のため振替休日を活用する場面は、少なくないと思います。振替休日とは、元々、所定休日・法定休日であった日を事前に労働日に振り替えて社員に労働させることができる替わりに、別の日を振替休日に指定して休暇を与える仕組みです。就業規則では、「当該振替を行う日の前後4週間以内に振替休日を指定・取得するものとする」といった規定をしていることが多いと思います。しかし、実態として振替休日を取れないという状況は、少なからず多くの組織で発生しているのではないでしょうか?


振替休日に休むことができなければ、休日出勤となり、休日労働の割増賃金の支払いが必要になります。また、振替休日をさらに振り替えて、再振替休日を指定することも行われていると思います。このような場合、毎日の労働時間が所定労働時間以内であっても、一週間の所定労働時間である40時間を超過すれば、残業代の支払い義務が発生します。振替休日の活用頻度が高い会社では、このような不払いが発生していないか検証が必要です。


2. 算定基礎不適合型


時間外労働手当の算定の基礎から除外できる賃金の種類は、労働基準法で定められています。しかし、実際には、それらのではないものを算定基礎から除外し、残業代の一時間当たり単価が法で定める水準より低くなっているケースがあります。このタイプも、経営者や人事部の違法意識がないケースが少なくないようです。


残業代の計算基礎から除外できる賃金は、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われる賃金、一か月を超える期間ごとに支払われる賃金です。但し、家族手当や住宅手当に関しては、家族構成や住宅の家賃の水準に関わらず一定額で支給されるような場合は、残業代の計算基礎に含める必要があります。

 

3. 手続き不履行型


一か月単位や一年単位の変形労働時間制、裁量労働などをはじめとする労働基準法上で定められた働き方について、法で定められた手順を踏まずに導入している場合も、違法なサービス残業が発生しがちです。それぞれの制度を導入することで時間外労働とみなされなくなる就業時間についても、労使協定を結んで届け出なければ効力が発生しません。


また、労使協定を届け出ていないケースでは、たとえば、1年単位の変形労働時間制を採用している会社で、対象期間内の週平均所定労働時間を40時間以内に設定する必要があるところ、40時間を超えていた、というケースもあります。


営業職に多く採用される事業場外のみなし労働時間制でも、同じようなことが起こりがちです。これは、外回りが多くて労働時間を適切に算定する手段がない場合に一定のみなし労働時間を適用できる制度ですが、適用対象としている社員の就業実態が、事務所への出社と退社時の立寄りを前提としているなどの場合は、労働時間を算定できますので、通常の労働時間管理のもとで残業が発生すれば手当を支払う必要があります。

 

4. 上限・下限設定型


毎月の残業時間の上限を決めて、その上限を超えて労働しても残業代を払わないケース。逆に、毎月一定時間以上残業をした場合にしか残業代を払わないケースがあります。中小企業にみられる傾向がありますが、会社にとっては、残業時間の長短に関わらず、残業代の支払い義務は発生します。

 

5. 端数切捨て型


一日15分未満や30分未満の残業時間は、切り捨てるという計算方法を採用しているパタ―ン。日々の時間外労働は、1分単位で認識することが必要です。したがって、15分未満等の端数を切り捨てるという処理方法は、違法な運用ということになります。一日15分の残業だとしても、一か月分まとまれば、相当の残業時間となる場合もあり、その時間を切り捨てることは、認められていません。一方、一か月単位の累計残業時間について、30分未満の端数を切り捨て、30分以上の端数を1時間に切り上げる運用は、認められています。

 

いかがでしょうか?残業代未払いとなる盲点は、意外と多いという感じがしないでしょうか?他にもまだパターンはありそうですが、まずは、前回と今回取り上げたケースが自社で発生していないかどうか、検証するところから始めることをお薦めします。



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